2025 Taiwan, Taitung, East Coast Land Art Festival 2025

コンセプト|

「ワディハン:エコーズ(Wadihan: Echoes)」という名は、アミ族の言葉で「谷からのこだま」を意味する “Wadihan” に由来します。
それは単なる音のイメージではなく、大地との共鳴を感じ取るひとつの方法です。
私たちに足を止め、谷の奥深くから湧き上がる声に耳を傾けるよう促します——山と海の対話、そして大地と記憶の交わる場所へ。

本作は、アミ族の多声合唱の伝統から着想を得ています。
この歌唱法では、それぞれの声部が独立性と個性を保ちながら、他の声と共鳴し、全体として調和を生み出します。
それは単なる音楽形式ではなく、「対位法」としての文化的表現でもあります——個が集団の中にあり、多様性が統一の中に息づくということです。

素材として用いた竹と鉄筋には、それぞれ異なる象徴性があります。
竹は自然のリズムを体現し、しなやかで強靭——まるで森を流れる旋律のようです。
一方、鉄筋は構造と緊張を象徴し、音の身体を支える基盤のような存在です。
これらの素材が空間の中で絡み合い、多声的な旋律線のように視覚的・触覚的な対位法を形づくります。

この空間的対位法を通じて、「ワディハン:エコーズ」は文化・音・素材の間に共鳴の場を生み出そうとします。
それはインスタレーションであると同時に、静かな多声的スコアでもあります。
大地の呼びかけ、記憶のささやき、そして谷と海のあいだに絶え間なく響き合うエコーに応答する作品なのです。

Text by Shu Lun Wu

作品名|ワディハン:エコーズ(Wadihan: Echoes)2025
媒材|竹、鉄筋 サイズ|約11.5m × 8.0m × 2.5m

photo by 姚家卿  (林家卿)
photo by 姚家卿  (林家卿)

photo by : 姚家卿 (林家卿)

心からの感謝を、Siki Sufin さんと JungShian Wen さんに捧げます。
お二人の惜しみない支援、卓越した技術、そして揺るぎない献身があったからこそ、《Wadihan: Echoes》は形となり、生命を得ることができました。
最初のスケッチや構造実験の段階から最終的な設置に至るまで、
お二人の手、忍耐、そして洞察力が欠かせないものでした。

この作品は、お二人の協働と寛大さなしには実現し得なかったでしょう。
お二人はこの「こだま」の一部となり、
《Wadihan: Echoes》のあらゆる梁(はり)、結び目、そして息づかいの中に
その共鳴を響かせてくれました。

photo by : 姚家卿 (林家卿)